13.マンションの外壁タイルの浮き

マンションの大規模修繕工事では、外壁タイルの浮きは一定程度存在することを前提として補修していますが、外壁タイルの浮きが新築工事の瑕疵として問題視されることは、通常ありません。
  しかし、外壁タイルの浮きによる落下の危険性が社会問題になりつつある現在、大規模修繕工事時期を迎えたマンションでは、外壁タイルの浮きが多く、落下の危険性が生じている場合、その原因が新築工事の瑕疵によるものではないかと懸念する管理組合もあります。
  私は、管理組合及び弁護士から依頼を受けて、これまで外壁タイルの浮きについて2件の調査報告書を作成しましたが、浮きの原因の立証は以下の手順で行いました。

1) 新築工事の外壁タイルの瑕疵の有無  
@ 外壁タイルの竣工時の検査    
マンションの管理会社又は管理組合は竣工図を保管しています。竣工図の特記仕様書の「タイル工事」の「検査」の項には、「打診検査」や「接着力試験」を実施するかどうかの記載があります。実施の記載があれば、検査結果は管理会社又は管理組合が保管していますので、その内容を確認します。    


打診検査に合格していれば、竣工時にはタイルの浮きがないことを示しています。また、接着力試験に合格していれば、接着力強度が合格基準の0.4N/o2以上であり、正常な付着強度を有していることを示しています。   
したがって、打診検査及び接着力試験の合格を確認することができれば、マンションの竣工時には外壁タイルの浮きは無かったと判断されます。  

A 現状の外壁タイルの接着力試験    
大規模修繕工事の準備期を迎えると、大規模修繕工事の設計書を作成するために建物の劣化診断を行いますが、その際に、外壁タイルの接着力試験を行うのが通常です。    
外壁タイルの接着力試験結果が接着強度0.4N/o2以上であれば、正常な接着強度を有していることから、外壁タイルの浮きはタイルの接着強度不足が原因ではなく、他の原因によって生じていると考えられます。  

B 外壁タイルの施工の技術的基準     
外壁タイルのひび割れ及び浮きを防止するために、以下の施工の技術的基準があります。   
@)誘発目地等で囲まれた外壁面積     
「鉄筋コンクリート造のひび割れ対策(設計・施工)指針・同解説」(日本建築学会)には、「特に講ずる場合以外は、周囲を柱・梁・床組・誘発目地などで囲まれた1枚の面積を25u以下とし、1枚の壁の面積が小さい場合を除いて、その辺長比を1.5以下とすることが望ましい。」と規定しています。辺長比は壁の長さを壁の高さで除した数値です。   

A)廊下・階段・バルコニーの手摺壁、屋上パラペットの誘発目地の間隔     
「鉄筋コンクリート造のひび割れ対策(設計・施工)指針・同解説」(日本建築学会)には、「架構面より突出したバルコニーや腰壁が長く連続する場合も、大きなひび割れが発生しやすい例であり、このような場合には3m程度以内に誘発目地を設けるのがよい。」と規定しています。また、この規定は竣工図(構造図)の「誘発目地詳細図」などに記載されていることがあります。   

B)外壁タイルの伸縮調整目地の幅     
伸縮調整目地は、外壁タイル部分における応力緩和、タイル・張付けモルタル・下地モルタルの接着面への劣化外力を遮断する効用があります。     
また、建物外壁、廊下・階段・バルコニーの手習壁、屋上パラペットの外壁タイルの伸縮調整目地は、コンクリートの誘発目地の上部に設置されていることが多いです。   
「外装構法耐震マニュアル−中層ビル用−」(日本建築センター)によると、「コンクリートのひび割れ誘発目地上部に伸縮調整目地を設置する場合、伸縮調整目地の幅は10o以上とする。」と規定しています。しかし、外壁タイルの伸縮調整目地の幅は、5o程度の場合が多く不足しています。 そのため、幅5o程度の伸縮調整目地は、温度変化に対する伸縮調整目地の効用を十分発揮せず、タイル及び接着面に大きい応力が生じ、タイルの浮きの原因になります。   

 
上記@)、A)、B)の技術的基準を下回る施工不良は、外壁タイル部分における応力緩和、タイル接着面への劣化外力を遮断する効用を十分発揮せず、外壁タイルの浮きの原因になります。また、上記@)、A)、B)の技術的基準を下回る施工不良は新築工事の瑕疵といえます。

2) 外壁タイルの浮き補修工事と大規模修繕工事との関連   上記Bの瑕疵は、新築工事の施工の技術的基準を下回る瑕疵ですから、大規模修繕工事で当該瑕疵に関連する補修工事を行う場合、下記の補修工事費は事業主(売主)が負担するのが相当だと思います。  

@ 誘発目地で囲まれた外壁タイル面積が25uを超えている場合、当該面積を25u以下にする誘発目地の補修工事費、及び当該外壁タイルの浮き補修工事費。  

A 廊下・階段・バルコニーの手摺壁、屋上パラペットの誘発目地間隔が3mを超えている場合、当該誘発目地間隔を3m以内にする補修工事費、及び当該外壁タイルの浮き補修工事費。
 
B 外壁タイルの伸縮調整目地幅が5o程度と狭い場合、当該目地幅を10o以上とする補修工事費、及び当該外壁タイルの浮き補修工事費。
  
大阪の事件では、大規模修繕工事の準備時期を迎えて、外壁タイルの浮きによる落下の危険性があることが明らかになり、管理組合はゴンドラを設置して落下の危険性がある外壁タイルを除去するとともに、外壁タイルの浮き数量を算出しました。当該事件では、バルコニーの手摺壁に誘発目地が設置されていないことが明らかになり、施工業者が当該部分の誘発目地の設置及び外壁タイルの浮き補修工事を無償で行うことで事件が解決しました。  
 
また、神戸の事件では、大規模修繕工事の準備時期に劣化診断調査と管理組合員に対するアンケート調査が行われました。アンケート調査結果の中に、外壁タイルの浮きの原因が新築工事の瑕疵によるものではないかとの意見があり、be goingが外壁タイルの浮き調査を行うことになりました。
当該調査では、廊下・階段の手摺壁、屋上パラペットの誘発目地間隔が3mを超えていること、誘発目地上部に設置された外壁タイルの伸縮調整目地の幅が5oであることが明らかになりました。

そのため、be goingは大規模修繕工事の際に、外壁タイルの浮き箇所のマーキングに基づいて、当該瑕疵に関連する補修工事費を算出することになりました。管理組合は、その補修工事費を損害賠償金額として、事業主(売主)に対して請求することになりました。