9.鉄筋コンクリート造マンションの構造スリット未施工

これまで3件の構造スリット未施工の瑕疵に関与しました。

いずれも鉄筋コンクリート造マンションのひび割れ調査の依頼を受けて、現場調査時に構造スリットの未施工が明らかになりました。

鉄筋コンクリート造の構造計算にあたっては、腰壁・そで壁等を構造壁と非構造壁とに明確に区別する必要があります。腰壁・そで壁等についての構造計算上の取扱いについては、下図に示すように、腰壁・そで壁等と構造骨組の接合形式のタイプに対応して以下のように考えます。

a)完全スリット型
腰壁・そで壁等と構造骨組との間に完全縁切り型スリットを設けて、構造計算時にその壁を非構造として取り扱います。

b)部分スリット型
部分スリットを設けて腰壁・そで壁等と構造骨組との目地部を部分的に薄くして(壁厚の1/2以下、かつ7cm以下)、その壁の骨組に及ぼす影響の軽減を図るようにします。また、その壁が骨組に及ぼす付加応力や変形拘束等についての検討が要求されます。

c)剛接型
上記以外の接合形式で、骨組の剛性、応力、変形、強度等について適切なモデル化及び断面設計を行う必要があります。



上記の完全スリット及び部分スリットの設置箇所は、竣工図または確認申請書の構造図面の軸組図に図示されています。

また、外壁の完全スリット及び部分スリット箇所は雨水対策としてシーリング目地が設置されます。軸組図に図示された外壁の構造スリット箇所に目地が設置されていなければ、構造スリットが設置されていないおそれがあります。タイル張りの外壁の場合も同様です。

構造図に図示された構造スリットの未施工は、腰壁・そで壁等によって柱の剛性が大きくなり、地震時には同箇所の柱に構造計算以上の応力が集中して、大きい損傷が生じます。その結果、保有水平耐力が低下し、耐震性が不足します。

以上のように、構造スリットの未施工はマンションの耐震性に大きい影響を与える重大な瑕疵といえます。