8.鉄骨鉄筋コンクリート造マンションの
  打継ぎ不良等による耐震性不足

大手マンション業者が建設した鉄骨鉄筋コンクリート造10階建てマンションの事例です。

事件の発端は、外壁コンクリートのひび割れや外壁タイルのひび割れ・剥離が多く、外壁コンクリートの貫通ひび割れから漏水が生じたことです。

その後、新たな瑕疵が次々に明らかになり、調査会社による詳細な調査が行われました。be goingは調査結果を受けて、瑕疵の原因、補修方法、補修費用に関する報告書をまとめてきました。

調査の結果、下記18項目の瑕疵が明らかになりました。

1 各階のコンクリート打継部の不良

2 外壁コンクリートの貫通ひび割れによる漏水

3 外壁コンクリートのひび割れ

4 外壁タイルのひび割れ及び剥離

5 共用廊下床コンクリートのひび割れ及び鉄筋の腐食

6 梁コンクリートのひび割れ

7 住居バルコニー床コンクリートのひび割れ及び漏水

8 外部階段コンクリートの剥離及び鉄筋の腐食

9 内隔壁コンクリートのひび割れ

10 10階及び3階の隔壁コンクリートの八の字形ひび割れ

11 地下電気室の引込開閉器盤部からの漏水

12 地下階(受水槽室、電気室)躯体コンクリートの漏水等及び柱脚部の損傷

13 駐車場ピットの天井、床、及び壁コンクリートの漏水

14 エレベーターピットの床及び壁コンクリートの漏水

15 被告が補修したとされる箇所のひび割れ

16 1階柱のコンクリート打継部の不良

17 1階自転車置き場壁コンクリートのひび割れ及び孔あけによる鉄筋切断

18 1階配管ピット内壁コンクリートのひび割れ及び漏水

上記の瑕疵は項目?を除いて、いずれも施工不良及び工事監理不備によるものです。なお、項目?は屋上下部の隔壁コンクリートの八の字形ひび割れですが、屋上スラブ下の内断熱によるコンクリートの熱膨張によって生じたものです。

また、上記の補修費用は4億円を超えました。

しかし、上記18項目は大半が躯体コンクリートの構造に関する瑕疵であり、仮に補修したとしても耐震強度が懸念されました。特に、各階のコンクリート打継部及び1階柱のコンクリート打継部の不良はレイタンス(コンクリートを打込んでまだ固まらないコンクリート表面に生ずる微細な粉末を含んだ泥状物)によるもので、各階のコンクリートが一体のコンクリート造になっていない問題があります。

また、コンクリート打継部をコア採取すると、打継部は手の力で簡単に分離する状態でした。レイタンスはコンクリート打設直後にブラシや高圧水洗で除去するのが施工上の原則です。

鉄骨鉄筋コンクリート造は、コンクリート打継部が一体の剛接合として構造計算を行い、安全性を確かめますが、レイタンスによるコンクリート打継部の分離は構造計算の前提を損なうものです。阪神・淡路大震災でも、打継部の施工不良による建物被害が多く報告されています。

裁判では、鑑定人による構造計算の再計算が行われました。

再計算は以下の三つの構造モデルで行われ、耐震性が検討されました。

1 原設計の構造図に合わせた構造モデル

2 現地調査結果を元に実建物に近い構造モデルで良好に施工されたと仮定した条件

3 構造モデルは2と同じで、現状の施工不良(ひび割れ、じゃんか等)を考慮した条件

構造モデル3の再計算は、一次設計(短期)の断面検定でNGの部材がありました。また、保有水平耐力の最低値は0.42でした。

姉歯事件以来、国土交通省の基本方針として、構造計算における保有水平耐力が0.5以下は取り壊しとし、0.5以上は補強及び構造計算の是正を認める指導を行っています。

裁判では、鑑定書提出後、マンション業者の社長から円満に解決したい旨の書面が出されました。また、裁判官から和解の提案がありました。

この事件は、マンション業者が解体費用、建替え費用、居住者の引越し・仮住まい費用等を含めて13億8千万円を支払うことで和解が成立しました。