7.検査済証が交付された鉄骨造3階建て
建売住宅の溶接不良

近年、鉄骨造3階建て建売住宅の溶接不良問題に3件関与しました。

相談を受けてすぐに溶接不良がわかるわけではありません。

はじめに、強い風が吹くと家が揺れるという相談を受けました。現地に行き、柱を繰返し押すと家が揺れ、時にはめまいを感じ、異様な揺れを体感しました。

確認申請書の構造図面と鉄骨部材の断面に相違がないか確認すると相違はなく、確認済証、中間検査済証、検査済証も交付されていました。

次いで、確認申請書には「届出・提出が必要なもの」欄があり、鉄骨造の場合には必ず、溶接部非破壊検査(超音波探傷検査)報告書に○印がつけられていますから、その報告書を事業者(売り主)から入手するよう相談者にお願いしました。

非破壊検査の対象は、一般には完全溶込み溶接部のすべてですから、報告書の検査箇所に完全溶込み溶接部の未検査箇所がないか確認をしました。

3件の溶接不良事件は、いずれも下図に示すパネルゾーンとダイヤフラムの溶接箇所の検査がもれていました。そのため、当該箇所について超音波探傷検査を行いました。検査結果はすべて溶接不良でした。

確認申請書の構造図面は図1に示すように、完全溶込み溶接ですが、検査結果は溶込み不良があり、部分溶込み溶接(図3)とみなされる欠陥がありました。欠陥原因は図2に示すように、裏当て金の未設置により、ルート間隔が狭いために生じた溶込み不良でした。溶接作業の手間抜きによる欠陥です。

また、板厚6mmのパネルゾーンでは、完全溶込み溶接でなく隅肉溶接(図3)が行われるという欠陥がありました。

部分溶込み溶接及び隅肉溶接の強度は完全溶込み溶接の1/√3に低減します。また、のど厚も完全溶込み溶接よりも小さくなります。

確認申請書の構造計算書に、現状の溶接に基づく数値を入れ直すと、欠陥溶接部は設計強度の1/3ないし1/2に低減し、安全性を有しないことが明らかになりました。

阪神淡路大震災では、元々、完全溶込み溶接であった箇所が部分溶込み溶接や隅肉溶接で施工されたために倒壊した事例が多く報告されています。

完全溶込み溶接箇所の溶込み不良は、現場での溶接補修は困難で、建替え補修が必要です。また、裁判でも建替えの判決でした。

鉄骨造3階建ての建売住宅は、家が揺れたり、板厚6mmの柱が使用されていたり、溶接部非破壊検査で完全溶込み溶接の未検査箇所がある場合は、溶接不良のおそれがあり、要注意です。


図1 確認申請書の溶接仕様(単位の数字はmm)




図2 欠陥溶接の事例



図3 継ぎ目の形式