1.地盤調査結果を無視した大手ハウスメーカー住宅の
  基礎ひび割れ

 大手ハウスメーカー住宅の基礎ひび割れについて、最近5件の相談を受けました。大手ハウスメーカーはひび割れ原因がコンクリートの乾燥収縮だとしてひび割れ補修を行います。大手ハウスメーカーのブランド住宅ですから、被害者はひび割れ原因が乾燥収縮だと信じてしまいます。

しかし、補修箇所で再びひび割れが生じたり、新たなひび割れが生じてから、相談があります。

大手ハウスメーカーは基礎の設計に先立って、スウェーデン式サウンディング試験による地盤調査を行います。スウェーデン式サウンディング試験機は先端が錐状になっていて、1kN(約100?)のおもりを載せて25cm貫入させる半回転数を調べて地盤の長期許容支持力度を求めます。

大手ハウスメーカーはスウェーデン式サウンディング試験結果の長期許容支持力度に基づいて「30kN/m2基礎」、「50kN/m2基礎」などの基礎を決めます。30kN/m2未満の場合は地盤改良をして長期許容支持力度を高めたり、杭基礎にして、建物に不同沈下が生じない対策を講じるのが通常です。

相談を受けた住宅の基礎は「30kN/m2基礎」または「50kN/m2基礎」で設計されていましたが、地盤調査報告書の試験結果はいずれも半回転数0の地盤があり、試験機を回転せずに自沈する層がありました。

平成13年国土交通省告示第1013号は「基礎の底部から下方2m以内の距離にある地盤にスウェーデン式サウンディングの荷重が1キロニュートン以下で自沈する層が存在する場合若しくは基礎の底部から2mを超え5m以内の距離にある地盤にスウェーデン式サウンディングの荷重が500ニュートン以下で自沈する層が存在する場合にあっては、建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。」と定めています。

しかし、相談を受けた住宅はいずれも有害な損傷、変形、沈下が生じないことを検討せずに「30kN/m2基礎」又は「50kN/m2基礎」で設計されていました。

相談を受けた住宅の基礎のひび割れは、地盤の支持力不足のため基礎に不同沈下が生じ、基礎の変形応力によって生じたものです。また、ひび割れ幅は0.3mmを超えていましたので、鉄筋コンクリート造の基礎の耐久性にとって有害な損傷です。

地盤支持力の不足による基礎のひび割れは、ひび割れ箇所にエポキシ樹脂注入等の補修とともに、基礎低部の地盤に薬液注入する地盤補強、または基礎底部に鋼管杭を圧入する補修が必要になります。

大手ハウスメーカーは何故、地盤調査結果を無視した基礎の設計を行うのでしょうか。私は以下の理由によると推測しています。

戦後の住宅不足は1970年代の始めに住宅戸数が世帯数を上回り、住宅の量の問題は解消されました。したがって、現在では大量生産の大手ハウスメーカーの社会的役割は終わったといえます。しかし、大手ハウスメーカーは住宅需要が減少するなか、企業存続のため大量の住宅を生産し、大量に販売しなければなりません。

地盤調査結果で地盤支持力が不足すると、地盤改良または杭基礎が必要となります。その場合、建築主の住宅予算が不足して受注できないおそれがあります。

しかし、大手ハウスメーカーは受注を最優先して、地盤改良又は杭基礎の費用を除いて契約し、施工します。

基礎にひび割れが生じると、大半の住宅はその原因がコンクリートの乾燥収縮であるとして、安価な補修費用で凌ぎます。

また、訴訟になると非を認めずとことん争ってきます。判決が不利とみるや、特約条項に事件を社会的に明らかにしないことを明記して和解に持ち込みます。

訴訟によるリスクがあっても、ブランド力による受注優先が利益をもたらすというのが、大手ハウスメーカーの戦略のように思えます。

大手ハウスメーカーの基礎のひび割れ事件では、テレビの心地よいコマーシャルとは全く異なる、法令違反の確信犯ぶりが伺えます。